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知っ得コラム

「相続」その日が来る前の予備知識その1

こんにちは。

前回は、「家を売る」場合に高く買い取ってもらうためのコツについてお話をしましたが、「家を売る」予定がなくても、ある日突然家や土地を売ったりする必要が生じる場合があります。

それは、親族が亡くなった場合に起こります。

「相続」です。

「うちにはたいした財産もないから関係ない」と思いがちですが、60歳以上の高齢者の8割以上は持ち家に住んでいるという統計が出ている日本ですから、家なり土地なりはあったりするので、やはり「相続」について知識があった方がいいようです。

そこで、今回は、「相続」問題に直面する前に知っておきたいことをまとめてみます。

 

「相続」

1.その日が来る前の予備知識 

 

人の死は誰もが避けられない出来事ですから、相続問題は誰の身にも起こります。

やるべきことを一緒に順を追って見てみましょう。

目次

  • 遺言書の確認
  • 相続するか放棄するか決める
  • 遺産分割協議を行う
  • 相続税の申告をする
  • 相続登記をする

まず最初にやること!

① 遺言書の確認

亡くなった方を仮に父親としましょう。

父親が急に亡くなったため、遺言書のことについて誰も聞いていない、という状況でも、生前遺言書を書いて隠してある場合があるので、「本棚」、「机」、「仏壇」、「神棚」などを探してみましょう。

もし、遺言書を見つけた場合、すぐに開けないように注意が必要です。

◆自筆証書遺言の場合

家庭裁判所で開封しなくてはならず、もし、先に開封してしまうと、改ざんが疑われてトラブルになったり、最悪5万以下の罰金となってしまうことがあるので要注意です。

◆公正証書遺言の場合

遺言書の封筒に「遺言公正証書」と書かれているなら、それは、公証役場で作成した公正証書遺言です。

その場合、公証役場に原本が保管されているので、その場で開封可能です。

 

② 相続するか放棄するか決める

相続の対象になる遺産は、現金預金、証券、不動産の他に借金など負の遺産もあります。

相続する対象より、借金などが多い場合は、相続の放棄をすることができます。

ただし、それには父親が亡くなって3ヶ月以内に父親の住所地にある家庭裁判所で手続きを行わないと放棄ができなくなるので気を付けましょう。

 

③  遺産分割協議を行う

相続人が複数いる場合は、誰が何をどれくらい相続するのかを決める話し合いをする必要があります。

 

◆法定相続分について

遺産の取り分について「誰がどれくらい」もらえるかというのは、民法で相続人の立場によって割合(法定相続分)が決められていますので、それを目安に分けることが可能です。

 

父親が亡くなって、母親と子供が二人いる場合の法定相続分は次のようになります。

亡くなった父親の配偶者である母親の相続分が1/2

残りの1/2を子供二人で分けるので、子供一人当たりの相続分は1/4になります。

あくまでも目安なので、必ずこの割合で分けなければならないわけではありませんが、もしも、遺産相続でもめて裁判になったときには、この法定相続分という考え方が重要になってきます。

遺産がお金だけならまだ分けやすいのですが、家や土地があると、どういう風に分けるかというのが難しい問題になります。

 

◆遺産を分割する方法について

遺産を分割する方法には4通りの方法があります。

1. 現物分割

 遺産をそのまま分ける方法で、一番オーソドックスな方法です。

 例えば、妻が家、長男が土地、次男が預金という感じです。

 預金を相続人で分けたり、土地を分筆してAの部分を長男、Bの部分を次男という風に分けるのも

 現物分割になります。

2. 代償分割

 建物など分割できない財産を相続したとき、他の相続人に「代わりに見合う現金を渡す」方法です。

3. 換価分割

 建物など分割できない財産を相続したとき、代わりに見合う現金が払えない場合に、「不動産を売却して売却額を分配する」方法です。

4. 共有分割

 不動産を相続したとき、相続人の間で共有する分割方法です。

 例えば、Aの土地を子供たちで共有して相続するときは、Aの土地に相続人それぞれの持ち分を登記します。

 長男1/2、次男1/2という具合です。

実際は、話し合いによって、これらの方法を組み合わせて分けることも必要になってきます。

◆共有分割の問題点

不動産の登記簿を見ると、所有者として共有者の住所、氏名、持分が記載されているのをよく目にします。

 

共有分割は、法定相続分などの割合で不動産の所有権を共有することができるので、一見、公平でスムーズな遺産の分け方に見えますが、実際は、問題を先送りにしているだけなので後々、トラブルになるケースが多いようです。

 

例えば、いざ共有する土地を売買しようとするときは、共有者全員の同意が必要となります。

一人でも同意してくれなければその土地を売買することはできません。

それが、更に共有者の死去により土地の持ち分が相続されるということになると、時間の経過とともにどんどん共有者が増えていき、売買したくても共有者全員の同意を得るのが更に難しくなります。

また、兄弟姉妹間では共有土地の維持管理も協力してスムーズに取り行えたとしても、縁が薄くなってくるにつれ、それは難しくなってくるでしょう。

このように、後々様々な問題が発生してもめることがないよう、共有分割をしたら、次の世代に権利が移る前になるべく早く代償分割や、換価分割の方法で共有を解消させることをお勧めします。

 

さて、誰に何をどれだけ分配するのかという話し合いが終わったら、「遺産分割協議書」を作成しなければなりません。

ひな形が法務局のホームページからダウンロードできるので、自分で作ってもいいし、面倒な場合は、弁護士か司法書士に依頼することもできます。

これは、不動産の相続登記や、銀行で亡くなった父親の預貯金を引き出す際に写しの提出を求められるので、作成したものは大切に保管しておきましょう。

 

 ~ちょっと脱線ミニ知識 その1~

相続する対象は、現金預金、証券、不動産がありますが、生命保険金も対象になる場合があるのをご存じでしたか?

通常保険金は相続の対象外なのですが、受取人が死亡した父親自身になっている場合は、相続の対象となります。

最近の生命保険には定期金給付を重視した契約人と受取人が本人という保険商品なども少なくなく、注意が必要です。

 

 ~ちょっと脱線ミニ知識 その2~

家の所有権を母親と子供が持つ場合で、母親が自宅に住み続ける意思がある場合は、家の所有権を移す際に「配偶者居住権」の登記も 一緒に行いましょう。

父親と同居していた母親が、自宅に住み続けていいという権利を「配偶者居住権」といい、2020年4月から施行されました。

これは、家の所有権とは違い、「住む権利」ですが、それにも登記が必要です。

ただし、父親と別居していた場合は、配偶者居住権は認められません

また、母親一人が自宅の所有権を持つ場合には設定する必要はありません。

 

④ 相続税の申告をする

相続税の申告は、父親が亡くなった翌日から10ヶ月以内に行わなければいけません。

遅延すると延滞税がかかるので注意が必要です。

相続税は、現金預金、生命保険の死亡保険金、生前贈与があった場合はその金額、そして不動産などを合計した遺産の総額に課税されますが、不動産のように金額が不明なものの場合、短期間のうちに売買できるわけでもないのにどうやって金額を出せばいいのでしょうか?

 

不動産は、路線価方式または倍率方式で評価します。

路線価及び倍率は、国税庁ホームページで閲覧できます。

 

<土地の場合>

◆路線価方式

路線(道路)に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額(路線価)を基に計算した金額で評価します。下のアドレスで検索できます。

https://www.rosenka.nta.go.jp/

◆倍率方式

路線価の定められていない地域の評価方式で、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて計算した金額で評価します。

※ 固定資産税評価額は、県税事務所や市(区)役所又は町村役場で確認できます。

<建物の場合>

固定資産税評価額によって評価します。

事前に所有の不動産がいくらくらいの評価になるか、国税庁のホームページを見ておくといいですね。

 

それにしても、実際に不動産を売買してお金が入って来たわけでもないのに相続税だけは支払わなければならないなんて大変ですよね!

 

でもご心配なく。 

誰にでも「基礎控除」があり、3,000万+(600万×相続人の数)で計算するので、相続財産より基礎控除額が上回ることが多く、税金の支払いを免れることが多いようです。

 

仮に、配偶者と子供2人が相続人の場合、基礎控除は以下の通りです。

3,000万+(600万×3)=4800万

4,800万以上の遺産が見込める場合、相続税の支払いが発生します。

 

街中に土地建物やアパートなどを所有している場合は、評価額が控除額を上回ることが十分に考えられますので注意が必要です。

このような相続税の申告は、税金の額が大きい場合、料金はかかりますが税理士に頼むのが一般的なようです。

 

 ~ちょっと脱線ミニ知識~

※生命保険の死亡保険金は、相続の対象にはなりませんが、相続税の対象にはなるので注意が必要です。

ただし、その場合、相続税の基礎控除とは別枠で「みなし相続財産の控除(500万円×相続人の数)」を控除することができ、そこからはみ出る分が相続税の課税対象となります。

 

⑤ 相続登記をする

不動産を相続したら、相続登記をしなければなりません。

しかし、相続税の申告とは違って期限があるわけではないので登記をしないまま放置している方も多いのが実情です。

登記をしていないと「まだ自分の所有物ではない」ということになるため、思わぬトラブルの原因になったりしますので、できれば1年以内に登記を行った方がいいようです。

相続登記の申請は「法務局」で行います。

 

ただし、どこの法務局でもいいわけではなく、「相続する不動産がある地域を担当している法務局」になります。

相続する不動産が遠方にある場合は書類を郵送することもできますが、書類に誤りや不備があった場合がその場で訂正できないため時間がかかってしまうことになり、申請期限を過ぎてしまう危険もあります。

そういう場合は、司法書士に書類の代行をしてもらうこともできるので、料金はかかりますが、司法書士に頼むのもよいでしょう。

 

さあ、ここまで父親の突然の死去から相続登記までという流れを簡単に見てきましたが、普段はデリケートな話題だったりするのであまり事前に触れることがない事柄だったりします。

しかし、肉親の間で相続でもめたり、相続税の支払いが滞り延滞金を支払う羽目になったりすることがないよう時々は頭の中でシミュレーションしておくのもいいかもしれません。

 

肉親の死は、悲しくつらいものです。

故人をしのぶ間もなく、やらなきゃならない事務的な手続きがいろいろあって、目の前のことをこなすのに手いっぱいになりそうですが、きちんとスケジュールをたてておかないと支払う税金にも差が出てきたりするんですよ。

次回は、「相続した不動産を売却する場合にかかる税金」に注目してお話したいと思っています。

 

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